機械化一貫体系でジャガイモを栽培してみた

ジャガイモの機械と聞くと、北海道で使われているような大型機械を思い浮かべる方が多いと思いますが、今回の栽培実証では、主に中規模に向けてジャガイモ機械化一貫体系を試していこうと思います。

機械化一貫体系でジャガイモを栽培してみた

種芋を買ってきた

品種は春作でポピュラーな男爵を使います。芽のしっかりした、いい種芋が入手できました。

素材がいいと、がぜんやる気が出ます。

コンテナに入った種芋の画像。品種は「男爵」
男爵の種芋の画像。芽がしっかりしており品質がよい

圃場の準備

3/17 移植前に施肥と耕うんを行います。(株)タイショーのグランドソワー(NPS-170-G3)を付けて耕うん同時施肥を行いました。

トラクタで1回走るだけだったので、思ったより早く作業が終わりました。

〇 使用機
 ・トラクタ:NTA343
 ・ロータリ:松山(株) グランドロータリ SKS1800D-4S
〇 施肥量:野菜専用化成115kg/10a(N:16.1㎏/10a)

ISEKIのトラクタNTA343にタイショーのグランドソワーと松山のグランドロータリで耕耘同時施肥作業を行っている画像

移植

3/18 今日はうね立てと移植を行います。面積は7a分作付けします。

マルチ栽培をするので、かんしょマルチロータリ(RAY907M)を使い同時マルチで畝立てします。

まっすぐできれいな畝が立ちました。

〇 トラクタ:RTS23
〇 うね寸法
 ・うね高さ:30㎝
 ・うね裾幅:45㎝
 ・条間:85㎝
〇 所要時間:1時間22分/10a(マルチセットは補助者が実施)※10a換算

うね立てが終わったので、早速移植していきます。移植機は、半自動野菜移植機(PVH100-90JLLX)を使います。マルチに穴をあけながら移植するので、マルチ栽培でも簡単に移植できます。

ジャガイモのマルチ栽培は深く植えるので、手植えは大変ですが、機械だと深植えも楽々です。

〇 移植条件
 ・条数:1条植え
 ・株間:30㎝
 ・植付深さ:20㎝
〇 所要時間:1時間34分/10a ※10a換算

ISEKIの半自動野菜移植機PVH100-90JLLXによる移植作業を行っている画像。手植えでは大変な深植えも機械では簡単にできることを示している

発芽

4/9 無事芽が出そろいました。

芽の出るタイミングが揃わなかったので、出始めた頃は欠株を心配していましたが、ほとんどの株が発芽し一安心です。

移植後に芽が出揃った試験圃場の画像。欠株もなくほとんどが発芽した

地上部生長中

4/30 順調に育ち、蕾がつきました。とても元気よく育っています。

移植したジャガイモの地上部の画像。順調に成長している様子を示している
試験圃場のジャガイモの蕾

開花

5/6 花が咲き始めました。綺麗な花です。昔は観賞用にもしていたそうです。

生育が進み花が咲き始めた様子を示した画像

防除

5/8 うっかりしていました。せっかく順調に育っていたのに、少し虫に食われてしまいました。

5月頃の圃場の画像。害虫の被害が出てきている
害虫被害にあったジャガイモの葉

ひどくならないうちに防除したいと思います。今回は乗用管理機(JKB17D)を使って防除します。

試験圃場で防除作業をしている画像。害虫被害が拡大する前に実施
ISEKIの乗用管理機JKB17Dで防除している画像。薬剤を撒くブームが10mあり、広い面積を一気に撒ける

細いタイヤでうねを踏まず、圃場の中まで入っていけます。

また、薬剤を撒くブームの長さが10.2mもあるので、広い面積を一気に撒けます。

作付面積が小さいので、あっけない位すぐに終わってしまいました。

〇所要時間:6分45秒/10a ※10a換算

イモ成長中

5/20 株に勢いがなくなってきました。

5月後半のジャガイモ試験圃場の画像。株に勢いがなくなってきた様子を示している
ジャガイモ試験圃場の株の拡大画像

イモがどのくらい育っているか掘って確かめてみたところ、予想よりも大きくなっていました。

生育を確かめるために一部掘ってみたジャガイモの画像。予想より大きく成長している
ジャガイモの生育具合の調査している画像。収穫にはまだ早いが黄変が近い様子

まだ収穫には早いですが、そろそろ黄変する頃でしょうか。

黄変

5/28 少し黄変し始めました。だんだん収穫が近づいています。

黄変が始まったジャガイモ試験圃場の画像
黄変が始まったジャガイモ試験圃場の株を拡大した画像。収穫時期が近づいていることを示している

茎葉処理

6/9 収穫適期になったので、田中工機(株)のひきぬい太郎(T5N)を使って茎葉処理をします。

収穫適期になったジャガイモ試験圃場の画像
田中工機のひきぬい太郎で茎葉処理した後のうねの画像。うねに茎葉の残渣がほとんど残っていない

うねに茎葉の残渣がほとんど残らないので、収穫がしやすそうです。また、茎葉をある程度まとめた状態で排出できるので、茎葉を圃場の外に運び出すのも楽にできました。

〇所要時間:1時間25分/10a
(マルチ、茎葉回収を除く)※10a換算

圃場の一部だけマルチを剥いでみた際のうねの画像。ジャガイモが沢山出てきている

マルチをはいでみると、沢山イモができていました。

収穫

6/11 とうとう待ちに待った収穫です。 天気も良く、圃場も乾いていて絶好の収穫日よりです。

松山(株)(ニプロ)のポテカルゴ(GRA650)を使って収穫します。掘ったイモはそのまま回収できるので、手間が省けます。

とてもゆっくりした速度で収穫しているのですが、どんどんイモが運ばれてきます。慣れないイモの回収選別作業に悪戦苦闘。イモの選別を早く正確に行うには動体視力が重要だと感じました。

松山のポテカルコ゚を使って収穫作業をしている画像
収穫したジャガイモの回収選別作業を行っている作業員の画像。そのまま回収できるため手間がかからない

後ろのコンテナ置台が昇降するので、イモを運び出す際、運搬車に横づけして楽にコンテナを積みこめました。

収量はおよそ2.5t(3.6t/10a)。 全部運ぶのに、2tトラックで2往復しました。 機械無しで1日にこれだけの量を収穫するのは、とても無理だと思いました。

〇所要時間:4時間17分/10a ※10a換算

作業時間計測結果

7aとそれほど広くない面積でしたが、機械のおかげで日々の業務と並行して作業ができ、無事栽培を終えられました。

私は全て終わってやれやれ、という気分だったのですが、やって終わりだと実証した意味がありません。重い腰を上げながら、時間計測結果をまとめてみました。

うね立て移植防除茎葉処理掘り取り合計
時間1時間22分1時間34分6分45秒
(1回)
1時間25分4時間17分8時間45分
人数2人1人1人1人4人
時間×人数2時間44分1時間34分6分45秒1時間25分17時間8分22時間58分
※防除回数が増えると、その分時間は増加します。
時間人数時間×人数
うね立て1時間22分2人2時間44分
移植1時間34分1人1時間34分
防除6分45秒
(1回)
1人6分45秒
茎葉処理1時間25分1人1時間25分
掘り取り4時間17分4人17時間8分
合計8時間45分22時間58分

<使用機>
◯ トラクタ:NTA343、RTS23
◯ 施肥機:(株)タイショー グランドソワー NPS-170-G3
◯ ロータリ:松山(株) グランドロータリ SKS1800D-4S
◯ 整形機:かんしょマルチロータリ RAY907M
◯ 移植機:半自動野菜移植機 PVH100-90JLLX
◯ 乗用管理機(防除):JKB17D
◯ 茎葉処理機:田中工機(株) ひきぬい太郎 T5N
◯ 収穫機:松山(株) ポテカルゴ GRA650

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。