規模拡大に乾田直播という選択、アリです

近年引き受ける田んぼが増えて、育苗設備不足や、人手不足になっていませんか?
こういった困りごとを解決できる栽培法、「乾田直播」についてご紹介します。

播種作業風景
高速汎用播種機での播種作業

乾田直播ってなんでイイの?

乾田直播とは、代かきせず、乾いた状態の田んぼに直接播種する栽培方法です。

最近は栽培技術の向上により失敗や減収も少なくなってきており、移植とそん色のない収量・品質を安定して確保している事例も増えています。

以前より取り組みやすくなった乾田直播は、作業人数を増やさずに作付け面積を増やすことができるので、昨今の農業人口不足により再注目を浴びています。

大規模経営に最適~作期分散と省力化

  • 移植栽培の苗づくりより前から播種できるため、作期分散に最適です。
  • 収穫時期がずれるため、作業ピークを平準化できます。
  • 播種の関連作業は乾いたほ場でトラクタにより行うため、大型機械での高速作業が可能です。
  • 苗の運搬・補給をする人を必要としないので、少人数で行えます。

移植に慣れた人に知ってほしい、乾田直播の違い

乾田直播では以下のような作業を行います。今回の記事では移植との相違点を中心にご紹介しながら、ポイントを解説していきます。

乾田直播の主な作業一覧表
主な作業と作業機の例

播種が移植より速い

移植と違い、機械によっては10km/h程度で播種できます。苗補給もないのでノンストップで播種作業ができ、あっという間に終わります。

ドリルシーダーの写真
ドリルシーダーでの播種作業 ※クリックで動画が見られます

春の排水対策が重要

圃場が乾かないと播種作業ができないので、乾きやすい圃場にするため排水対策を行います。

プラウ作業写真
プラウで深耕して水がしみこみやすくする
溝堀機作業写真
溝堀機で明渠を掘り排水を促す

圃場の均平度合いがより重要

乾田直播種は移植より均平度合いが重要となるのでレベラーでの均平作業を必ず行います。

移植の苗より丈が低いうちから入水するので稲が水没しやすいため、しっかりと均平を取ります。

また、生育初期は水位を高くできないので、高低差をなるべく減らし浅水でも全体に水がいきわたるようにして、むらなく一発処理除草剤が効くようにします。

均平不足の図
均平度合いが悪いと・・・
均平作業写真
レーザーレベラーでの均平作業

播種の前後に圃場の鎮圧が必要

しっかり発芽させるため鎮圧が必要です。

播種前に適切な硬さに播種床を鎮圧することで播種深度が安定し発芽率が上がります。

また、播種後にも鎮圧することで籾を土と密着させ水分を吸いやすくします。

鎮圧作業写真
ケンブリッジローラーでの鎮圧作業
鎮圧は大事!

鎮圧作業は発芽の安定化以外の目的もあります。

乾田直播は代かきをしないので、漏水(地下浸透)防ぐために繰り返し鎮圧をして土壌表面を締め固めます。

砂質の圃場では鎮圧しても漏水防止にならないため乾田直播に適しません。乾田直播はやりやすい圃場で行うのがおススメです。

苗立ちまで湛水させない

水が溜まったままになると籾が酸欠で死んでしまうので、発芽してある程度の丈(1.5葉程度)になるまで湛水しません。(土壌水分が足りない場合、発芽を促すために走水は行います)

湛水後の水管理や栽培管理は基本的に移植と同じです。中干しの実施は茎数を見て判断します。

水管理の図

発芽のタイミングによっては水が必要な期間が移植と異なってきますので、用水の確保できる期間に余裕のある圃場で行うと栽培し易くなります。

湛水前にも除草剤が必要

発芽したばかりの稲は雑草より生育が遅いので、湛水前に除草することで湛水するまでに雑草に負けてしまうのを防ぎます。

湛水前は噴霧タイプの

  • 土壌処理剤(雑草の発芽を抑制する剤) 例:マーシェット等(発芽前)
  • 非選択性茎葉処理剤(植物を枯らす剤) 例:ラウンドアップ等(発芽前)
  • 選択性茎葉処理剤(雑草のみ枯らす剤) 例:クリンチャーバス等(発芽後)

を使います。

乾田防除作業写真
乗用管理機(ハイクリブーム)での湛水前の防除

湛水後は移植と同じ一発処理剤などの水稲除草剤を使います。


乾田直播がどういうものかイメージ出来ましたでしょうか?詳細については今後の記事で触れていこうと考えておりますのでご期待ください。

皆様も乾田直播を上手に組み込み、無理なく大面積をこなす経営にチャレンジしてみてはいかがですか。

直播栽培には、春に雨が多い地域に向いた湛水直播もあります。
気になる方はこちらへhttps://www.iseki.co.jp/einou/direct-seeding-rice/

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。