有機水田で自動抑草ロボットテスト中!

井関農機は有機米デザイン(株)と業務提携を結び、現在開発中の自動抑草ロボット、通称「アイガモロボ」、の早期販売・普及に向けて取り組んでいます。今回はこのアイガモロボを使って、有機水田の雑草抑制をテストしていきます!

有機水田で自動抑草ロボットテスト中!

アイガモロボで有機水田の抑草に挑戦

自動抑草ロボット「アイガモロボ」は、水田内を自動で動き、スクリューで水を濁らせることで光を遮り雑草の成長を抑えます。除草剤を使わずに雑草が生えにくい状態をつくることで、有機栽培における除草の手間を大幅に削減したいと考えています!

今回は夢総研の有機水稲圃場にアイガモロボを20日間投入して雑草の発生に関係すると言われている土の堆積量と酸化還元電位を定期的に測定し、雑草の発生状況も追跡調査しました。

開発中の自動抑草ロボット「アイガモロボ」の本体画像。圃場の水を濁らせて雑草の発生を抑制する

アイガモロボ投入!

テスト圃場は昨年まで慣行栽培で除草剤を使用していたのですが、今年から有機的管理に取り組み始めました。

5月14日に田植えを行い、3日後の5月17日にアイガモロボを投入!

ロボットはソーラーパネルで充電しながら、GPSの位置情報をもとに動きます。投入初日も水田内をまんべんなく動いていましたが、安定して走らせるためにはある程度の水深が必要であり、稲の葉先だけが水面から顔を出している状態…

今後の生育経過をしっかり見守っていく必要がありそうです。

有機栽培水稲圃場にアイガモロボを投入して1週間後の試験圃場
投入1週間後の圃場

続いてロボット投入による土壌への影響を見るために以下2つの項目について調査を行いました。

1)土の堆積量の測定

ロボットを走らせることで泥が巻き上げられて堆積し、雑草の発生を抑制することが考えられます。ロボット投入期間中の土の堆積量を図るためにあらかじめ土を入れた皿を田面に置き、土の堆積量の変化を測定していきます。

2)酸化還元電位の測定

土壌が還元状態になると雑草が発生しにくくなる傾向があり、酸化還元電位がマイナスへ傾くと抑草効果が期待できます。今後も定期的に測定していき、値が安定してマイナスになるか調査していきます。

アイガモロボの効果を測定するために、試験圃場の酸化還元電位を計測しているところ
酸化還元電位を測定

12日経過 ロボと稲の途中経過

アイガモロボを投入してから12日経過しました。ロボットは初日から順調に稼働を続けています。

圃場を元気に動く姿に癒されました。

ロボを投入してから12日後の試験圃場。アイガモロボが順調に稼働している様子
元気に動いてまーす

しかし、まだまだ稲は小さくロボットの走行跡で稲が倒れているのが気になりますね。今後、稲はきちんと回復していくのか、調査を続けます。

アイガモロボが通過した後の苗。ロボに踏まれて倒れたままになっている
倒れた稲はいつ回復するかな…

16日経過 濁り継続中 稲は元気

アイガモロボ投入後16日経過しました。テスト圃場は全体的に濁っています。アイガモロボを投入していない同時期の圃場(慣行栽培)と比較しても濁りは強く、目立った雑草もありません。

この濁りが最後まで継続し、雑草を抑制してほしいですね!

アイガモロボを投入してから16日後の圃場。ロボの効果で水が濁っている
ロボあり
ロボの効果で水が濁っている
アイガモロボを使用していない圃場。ロボが稼働していないので水が澄んでいる
ロボなし
水が澄んでいる

また、3日前にロボットが通過した跡で倒れていた稲もばっちり回復し、深めの水位を維持しても元気に育っている様子でした。

アイガモロボが通過して倒した苗の画像
5月28日
稲が倒れていましたが…
アイガモロボが通過いて倒した苗が4日程度で立ち上がった様子
6月1日
無事に回復しました!

20日経過 アイガモロボ投入終了

アイガモロボ投入から20日間が経過し、引き上げのタイミングとなりました。

実証開始当初小さかった稲も草丈35㎝、茎数15本程度に成長しています。

アイガモロボを投入してから20日後の圃場。ロボを引き上げるタイミングの稲の様子を示している
20日後 稲もしっかり成長しました

土の堆積量は3地点の平均で、5月15日:8㎜、5月26日:10㎜、6月3日:12㎜、6月7日12㎜となり平均で合計4㎜の堆積量の増加が見られました。土が堆積したことによる抑草効果はいかほどでしょうか…。

アイガモロボ引き上げ時の土の堆積量を計測。順調に増加している様子を示している
最終的な土の堆積量

約1週間おきに測定した酸化還元電位は、ロボットの投入日数が増えるにつれてマイナスの値が大きくなる傾向がありました。土壌がうまく還元状態になり、雑草抑制にプラスの効果を与えてくれることを期待します。

6月15日に雑草量の測定を行うので、そこでの効果の検証が楽しみです!

ロボ引き上げ後8日経過 雑草量調査

アイガモロボ投入試験後、コドラート法という手法で雑草量を判定しました。圃場内に稲の草丈と同じ長さの辺を持つ正方形の枠を置き、その中で雑草が覆っている割合を調べます。

3地点で調査した結果、雑草の被覆率は1-3%でほとんど生えていませんでした。

また、発生が確認できた雑草「アゼナ」の成長も1㎝程度に抑えられました。現在の稲と雑草の生育差を考えると、稲の成長が雑草に打ち勝ってくれることが期待できそうですね!

試験圃場の雑草量調査時の画像。目立った雑草は殆どみられない
目立った雑草は2つくらい

水深による水稲生育への影響も気にしていましたが、ばっちり成長していました。

自動で抑草してくれるアイガモロボ、現在まだまだ開発中ではありますが有機水稲栽培で力を発揮してくれそうです。今後も引続き実証を行い、1日も早い普及を目指します!

収穫間際! 雑草チェック

収穫まであと10日、稲刈り前最後の雑草チェックを行いました。

圃場には所々倒伏がみられるものの、60 株植えで1株当たりの茎数20~25本程度と十分な仕上がり。アイガモロボの接触等による生育への大きな影響は無かったようです。穂も成熟し、稲刈りが楽しみですね。

アイガモロボ試験圃場の収穫間際の画像。所々倒伏しているが、概ね順調に生育した

気になる雑草チェックの結果です!

アイガモロボは田植え直後から20日間投入し引き上げてから3か月弱経過しているのですが、雑草はほとんど発生していませんでした。ちらほらと生えている雑草も小さく、稲の登熟に大きな影響はなさそうです。

アイガモロボ試験圃場の収穫間際の条間の画像。しっかりと雑草が抑制されている
バッチリ抑草されてます◎
アイガモロボ試験圃場の収穫間際の条間の画像。しっかりと雑草が抑制されている
バッチリ抑草されてます◎
アイガモロボ試験圃場の収穫間際の雑草の様子。少し生えているが生育へは影響がない程度に抑草されている
この程度の草なら稲の生育に影響がなさそう

やはり、生育初期にアイガモロボで圃場をしっかりと濁らせたことが、雑草の成長の抑制につながったのではないでしょうか。

残すは収穫のみ。収量、食味も◎!!を期待します。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。