ハウスファーモを野菜のセル育苗に使ってみた

工事不要、電源不要でカンタン設置できる環境モニタリング装置「ハウスファーモ」を野菜のセル育苗に活用できるか試してみました。

ハウスファーモを野菜のセル育苗に使ってみた

ハウスファーモは工事不要、電源不要で簡単に設置できる、ハウス内の環境モニタリング装置です。

一般的には、イチゴなどハウスで栽培する果菜類で多く用いられていますが、最近、水稲の育苗に使ってみたいなどの問い合わせも増えてきています。そこで、これから育苗が本格化するキャベツのセル苗育苗にハウスファーモを使ってみました。

セル育苗でハウスファーモを用いるメリットは果菜類で使用するのと同様、①ハウス環境の見える化、②プッシュ通知機能による異常時の通知がありますが、今回はそれ以外として、地中湿度センサーの活用について検証したいと思います。

果菜類でのハウスファーモ使用の詳細は、「ハウスファーモを実際に使ってみた!」を参照ください。(※こちらの記事は旧型機のため、現行機と仕様等が若干異なります) 

また、あわせて夢総研でのキャベツのセル育苗の様子も紹介したいと思います。

まずキャベツを播種して、ハウスファーモを設置しました

<キャベツの播種概要>

  • 播種日:2021年6月4日
  • 作物:キャベツ(品種 いろどり)
  • セルトレイ:128穴(ヰセキ純正)
  • 培土:ヰセキセル苗用培土N80、覆土にはバーミキュライト使用

発芽管理(2日間)後、6/6朝にハウスのベンチに並べ、ハウスファーモ(Fタイプ)を設置しました。

ハウスに出してからのかん水は自動かん水装置を使用
(初期は8時と13時にかん水するようタイマー設定)

地温センサー、成長点温度センサー、地中湿度センサーを設置したハウス内の画像
成長点温度センサー、地温センサー、地中湿度センサーを設置

地中湿度センサーを写真のようにセルに差してみました。(128穴トレイでギリギリ)

メーカーによると地中湿度センサーはセンサー全体を土に埋めなければ正確な値が測定できないということですが、セルトレイでは全体は入らないので、とりあえずこの状態でどんなデータが取れるかみることにします。

設置した地中温度センサーの拡大画像。セルトレイのセルに設置している

地中湿度センサーの測定結果

地中湿度のデータは以下のような感じです。

センサーが正しく挿入されていないので、測定値が正しいかは疑問が残るところですが、自動かん水装置が動いた時間には値が上がっており、遠隔地からでも自動かん水装置が正常に動いているかの確認には使えそうです。

地中湿度センサーの測定データのグラフ。自動かん水装置が動作した際に湿度が上がっていることが分かる

自動かん水装置は便利ですが、予想外の事態などで止まっていることもあります。

特にこれからの時期は1日かん水装置が止まると苗が全滅してしまう場合もあり、ハウス担当者としてはハウスに行けない時、正常にかん水しているか心配ですがハウスファーモの地中湿度センサーを用いると、かん水装置が動いたことを確認でき心配事が減りそうです。

播種後9日目(6/13)(子葉展開)

子葉が展開し1葉目が少し出てきました。この時期に発芽しなかったところや奇形株は補植しました。(発芽率は約98%でした)

子葉が展開し1葉目が少し出てきたキャベツの苗
発芽しなかったところや奇形株の捕植作業を行っている様子

今日は10時過ぎにハウスに苗を見に行った際、少し乾いていたので、手でかん水を行いましたが、地中湿度の記録にはしっかり反映されていました。

地中湿度センサーの測定データのグラフ。手動でかん水を行った時間帯に湿度が上がっている

播種後14日目(6/18)(2葉目展開中)

本葉2枚目が展開中です。この時期くらいから1回目の追肥を行いますが、まだ葉色は濃く、今週の土日は天気もよくないようなので、もう少し様子を見ることにします。

本葉2葉目が展開中のキャベツの苗
本葉2葉目が展開中のキャベツの苗の拡大画像。まだ葉色が濃い様子を示している

播種後17日目(6/21)(2葉展開、追肥)

本葉2枚目が展開し、3葉目が出てきました。葉色が少し淡くなってきたので追肥を行いました。

本葉2枚目が展開し3葉目が出てきたキャベツの苗。葉色が淡くなったので追肥を行う
育苗中のキャベツの苗に追肥を行っている画像。ナウエル有機液肥の1000倍液を約1L/箱でかん水を兼ねて散布している
ナウエル有機液肥 1000倍液 約1L/箱 (かん水を兼ねて実施)

播種後20日目(6/24)苗完成

3葉目が展開し、根鉢も形成して十分引抜可能になったので苗完成です。

梅雨期間の育苗を想定していましたが、今年はあまり雨も降らず条件は良かったので、徒長もせず、まずますの苗が育苗できました。

3葉目が展開し根鉢も形成され、育苗が完了したキャベツの苗
育苗後のキャベツの苗。徒長もせずに育苗できている
育苗後のキャベツの苗の根鉢の拡大画像
根鉢の形成もOK

育苗期間のデータを確認

PCから最大14日間の各測定項目のデータを見ることができます(6/10~6/24)。日射量をみると、梅雨の季節ですが比較的晴れの日が多かったことがデータからもわかります。

また、データはcvs形式でダウンロードできるので期間中の平均値などを計算してみました。

気温(℃)地中温度(℃)湿度(%)CO2(ppm)地中湿度(%)
平均23.323.173.4438.867
最高38399974493
最低15152134254
平均最高最低
気温
(℃)
23.33815
地中温度
(℃)
23.13915
湿度
(%)
73.49921
CO2
(ppm)
438.8744342
地中湿度
(%)
679354

このようにデータを蓄積していくことができるので、今後の育苗管理の参考にしてくことができます。

まとめ

今回、ハウスファーモの地中湿度センサーを野菜のセル育苗に活用できるか検証しました。

センサーを正しく設置はできないので、測定値の精度については課題がありますが、測定値を見てみると、セル内の水分状態を反映しているようなので、かん水装置が正常に動いているかなど、遠隔地からおおまかなセル内の水分を確認することには使えそうな結果が得られました。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。