次期型アイガモロボ実証中!!

抑草機能・生育への影響はそのままに“適応条件の拡大”と“操作の簡易化”を備えた「アイガモロボIGAM2」。2024年の稼働実証の様子をレポートします。

次期型アイガモロボ実証中!!

ヰセキは有機水稲栽培で課題となっている雑草対策の解決の一手として、2023年に水田の抑草を自動で行う「アイガモロボIGAM1」の販売を開始しました。また、平行して次なるモデルチェンジ機「IGAM2」の開発・稼働実証を進めて参りました。

抑草機能・生育への影響はそのままに“適応条件の拡大”と“操作の簡易化”を備えた「アイガモロボIGAM2」。2024年の稼働実証の様子をレポートします。

アイガモロボ(IGAM2試作機)の実証ポイント

今回の実証では、以下のポイントを検証していきます。

その① 適応条件の拡大

アイガモロボは、抑草効果を得るため(圃場内でのスタックや苗抜きを回避するため)の圃場条件は、圃場の均平(±4cmの均平確保)と適切な水管理(最低水深5cm以上)が推奨されています。

IGAM2試作機は、推進方式をスクリュー型からブラシ型に変更することで、圃場の均平精度および最低水深といった適応条件の拡大を目指します!

※蒸気船のように船体の両サイドについている車輪(ブラシ)が水をかいて進みます

IGAM2試作機のブラシ部分の画像
IGAM2試作機
IGAM1のスクリュー部分の画像
IGAM1

その② 使用方法を簡単に

IGAM1は、圃場の形を入力し、その範囲内を碁盤の目状に走行します。

IGAM2試作機は、圃場内をマスクメロンの網目のように航行しながら圃場の形を学習する方式の導入を検討しています(お掃除ロボットのような仕組み)。また、IGAM2試作機はサイズや組み立て方も大きく変更となっています。そこで、航行方式や機体のサイズ、組み立て方の変更によりアイガモロボの使用が簡単になったかを検証します。

ランダム走行した際の航行軌跡(IGAM2)
IGAM2試作機の航行軌跡
碁盤の目で走行した際の航行軌跡(IGAM1)
IGAM1の航行軌跡

その③ 雑草の抑制効果

IGAM1では栽培初期の雑草の抑制効果を確認しており、その結果、実証圃場(茨城県)では収量 9俵/反以上を達成しました(2023年)。

今後は、生育調査を通してIGAM2試作機でも今まで通り、雑草の抑制効果があるかどうかを実証していきます!

生育調査の様子(アイガモロボ引き上げ10日後)
生育調査の様子
収穫時の様子(2023年)
収穫時の様子(2023年)

圃場準備

実証を行う圃場(茨城県)は、過去3年間、有機栽培で水稲を作っています。2023年は、IGAM1の適応条件(±4cmの均平)に合うようにレーザーレベラーを使用して圃場の均平化を行いました。今年は、適応条件の拡大を検証するため、レーザーレベラーを使わずに、代かきのみで圃場を準備しました。

ISEKIのトラクタ「TJV755」で代かき

使用機械:TJV755、サイバーハローTXZ501

また、雑草の発生を抑制するために”2回代かき”を行いました(荒代かきを4/27、本代かきを5/7)。

※2回代かき・・・荒代かき後、水を張ったまま(10日以上が効果的)水温を上げておくことであえて雑草を発芽させます。出てきた雑草を本代かきで練り込む、または浮かせることが出来ます。

有機水稲の育苗

品種:コシヒカリ                                                                                播種日:4/16                                                                                 播種量:130g(乾籾)                                                                                            育苗培土:ヰセキ培土 有機

有機栽培は、化学農薬・化学肥料は使用できないため、有機JASに適合した資材を使う必要があります。今回使用した「ヰセキ培土 有機」は、有機JASに適合した培土で全国各地でお客様よりご好評をいただいております。

育苗管理(播種・かん水等)は慣行栽培と同様なので、有機培土を使用しても順調に苗をつくることが出来ました。

水没しない草丈の苗
水没しない草丈の苗
プール育苗でムレ苗も発生しませんでした
プール育苗でムレ苗も発生しませんでした

今回、移植直前に気温が上がり過ぎたため、約18cmと目標よりもやや長い苗になりました。

植付け苗

田植え&IGAM2試作機投入

移植(5/9)は50株/坪で行い、1日あけた5/11にIGAM2試作機を圃場に投入しました。

IGAM2試作機の組み立て方は、
①本体から出ている軸にブラシをさす                                                                                  ②ねじで止める
とシンプルで、5分ほどで組み立てが完了しました。

組み立ての様子。ブラシを取り付ける向きに注意!!
組み立ての様子。ブラシを取り付ける向きに注意!!
現行型の組み立て時間は約10分ほど
現行型の組み立て時間は約10分ほど

また、IGAM1からひと回り小さくなったことで重量が約1/3と軽くなり、1人で簡単に持ち運べました。アイガモロボは太陽光パネルによる充電で稼働するので、投入前に2時間ほど屋外に静置し充電させてから圃場に投入しました(投入した圃場の大きさは43aと37aです)。

現行型と次期型のサイズ比較
現行型と次期型のサイズ比較
一人でも軽々持ち運べます
一人でも軽々持ち運べます

IGAM1は、投入時、位置情報補正のためにロボットを回転させたり、稼働圃場の形を設定したりとスマートフォンを必要とする手順がいくつかあります。IGAM2試作機ではそれらが不要となり、電源ボタンを押せばすぐに稼働できます。

ここまでの“簡単な組み立て“持ち運びやすさの向上”“投入の簡易化”といった実証ポイントの2つめでもある使用方法を簡単にを実感することが出来ました。

IGAM2を投入
次期型は、電源ボタンを押して後は圃場にいれるだけ

IGAM2試作機稼働の様子

実証ポイントである”適応条件(均平・水位)の拡大”を確認していきます!

検証①-A 適応均平条件について

IGAM2試作機を投入した圃場はロータリー耕のみで準備しましたが、推進方式をブラシ型にして推進力が向上したことにより、乗り越えられることも増えてきました。

検証①-B 適応水位条件について

IGAM1を使う際は水深(最低水深5cm以上)の確保を推奨しているため、深水でも水没しないような苗が必要となります。しかし、水位を深めにすると水田の高低差により、より深いところが出来てしまい、結果として苗が水没してしまう可能性が出てきます。

そこで、実証圃場では最低水深をより浅くすることが可能かを検証するため、水深を3cm(水位センサーで計測)に保ち、IGAM2試作機を稼働させました。

その結果、スタックすることなく、順調に稼働することが出来ました!

順調に稼働した時の航行軌跡
順調に稼働した時の航行軌跡

ちなみに…
ブラシの素材や形状を新しくしたり、長さを調整したりと試行錯誤を繰り返しております

初期版ブラシを装着して稼働
初期版ブラシを装着して稼働
改良版ブラシを装着して稼働
改良版ブラシを装着して稼働

IGAM2試作機の引き上げ

IGAM2試作機の投入から3週間が経ち、草丈が35㎝を超えてきたので引き上げました。雑草の発生は概ね抑えられており、慣行栽培と同等に生育しています。

アイガモロボ引き上げ後の圃場の様子
アイガモロボ引き上げ後の圃場の様子

IGAM2試作機では、水のにごりやトロトロ層での抑草効果に加え、ブラシが水底を掻くことで発生初期の雑草を浮かせる効果も見られました(圃場の条件によるため、必ずしも雑草が抜けるわけではありません)。

雑草の芽

水深が浅く、土が露出したエリアでは雑草が生えてきたので、IGAM2試作機の引き上げ翌週に水田除草機WEED MANを1回使用しました。

ちなみに…水位を安定して管理をするためには、水田ファーモがおススメです

水田ファーモの本体画像

IGAM2試作機による抑草効果

ここからは、IGAM2試作機引き上げ後の稲の生育状況を追っていきます。

〇田植え1か月後(6/11)

圃場全景
調査株
調査結果:草丈35.1cm、茎数18.9本/10株、葉色(SPAD値)40.5

こちらはIGAM2試作機引揚げ10日後、田植えから1か月後の様子です。写真のように圃場内(あぜ際など一部は除く)は雑草がなく、IGAM2試作機が抑草効果を発揮しました。

また、中干しは6/14~7/2(19日間)に行いました。

〇田植え2か月後(幼穂形成期)

7月に入り、夢総研の稲は幼穂形成期を迎えました。

圃場全景
調査結果:草丈80.4cm、茎数37.1本/10株、葉色(SPAD値)37.8
調査株
条間の様子①
条間の様子②

雑草対策の成否を判断する目安として、「幼穂形成期の雑草発生量が50g/m²以下」という基準があります。写真を見てわかるように、基準を大幅に下回っているため、IGAM2試作機による雑草対策が成功しました!

〇出穂期(7/29)

7月、出穂期を迎えました。

出穂期の圃場の様子
調査結果:草丈125.0cm、茎数22.2本/10株、葉色(SPAD値)32.6
出穂期の生育調査の調査株
出穂期の条間の様子①
出穂期の条間の様子②
出穂期の条間の様子③

引き続き、雑草を抑えることが出来ています!IGAM2試作機のおかげで有機でも手がかからずに栽培できています。収穫が待ち遠しいです…

収穫

9月になり、待ちに待った収穫を迎えました。

収穫期の圃場の様子

IGAM2試作機を稼働させたほ場は、生育初期から継続して雑草を抑制できたので、順調に穂が実りました!そして、坪刈り収量を調査しました。

坪刈り調査の様子

IGAM2試作機が稼働したほ場では、栽培地域の慣行栽培(化学肥料・農薬を使用する)と同等の収量がとれました。

IGAM2試作機を使ってみて

今回の実証は、「適応条件」、「使用方法」、「雑草の抑草効果」次の3点に着目して行いました。

  • 水位適応条件の拡大

航行方式をブラシ型に変更し、走破性がアップしたことでほ場の凸部分(最低限の水位を満たす)でもスタックしにくくなりました。ほ場の凸凹がひどく無ければ、ほ場の均平準備が代かき程度で済むので有機栽培に取り組みやすくなりました。

  • 使い方が簡単に

IGAM2試作機は、電源ボタンを押すだけで自動で航行を開始したり、組み立て・持ち運びが容易になったりと、IGAM1より使いやすくなったと実感しました。

  • 雑草の抑草効果

生育初期の雑草を概ね抑えることができ、結果として、慣行栽培と同等の収量を得ることができました。

皆さんもぜひアイガモロボで無農薬・有機栽培にチャレンジしてみませんか?

販売決定!!

実証を行ってきたIGAM2試作機ですが、2025年春より、販売することが決定しました!!

次期型アイガモロボIGAM2のチラシ

今回新たに販売するアイガモロボは、実証をする中でいくつもの改善を重ねていました。

新たな航行方式の推進力を生むブラシは、素材や形状により変形し、推進力が低下したり、苗にダメージを与えたりすることがありました。この課題を解決し、販売機は頑丈かつ苗を傷つけにくいタイプを採用しました。

初期版ブラシを装着して稼働
初期版ブラシを装着して稼働
改良版ブラシを装着して稼働
改良版ブラシを装着して稼働

また、自立航行アルゴリズムになったことで、はじめは航行のムラがみられることがありました。そこで、航行プログラムを改善し、圃場をまんべんなく稼働するようになりました。

アルゴリズム改善前の航行軌跡
アルゴリズム改善前
左上のあぜに航行が集中している
アルゴリズム改善後の航行軌跡
アルゴリズム改善後
ほ場をまんべんなく航行している

新型モデルのアイガモロボ「IGAM2」の詳細については、井関農機のホームページにてご確認ください。

「自分の田んぼでも、うまく動くだろうか?使うときは、どんなことに気を付ければいいのか?」といった気になることがありましたら、ぜひ全国各地で開催しているヰセキの展示会や順次開催予定のWEBセミナーにてアイガモロボの動きなどをその目でご確認ください!!

生まれ変わったアイガモロボで無農薬・有機栽培にチャレンジしてみませんか?

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。