「納豆菌の力」を大根にも使ってみた!

夢総研では、「納豆菌の力」で土の状態が良くなると作物にどのような変化が起こるのかを調べるため、
様々な作物で実証を行っています。



昨年行った「納豆菌の力」の実証では、大根はネキリムシの被害がひどくて効果確認ができなかったため、
今年再度実証を行いました。

「納豆菌の力」を大根にも使ってみた!

試験方法

「納豆菌の力」は、枯草菌(納豆菌は枯草菌の一種)を数種類ブレンドした微生物資材です。

「納豆菌の力」を施用すると、土の中のワラなどの大きな有機物を最初に分解してくれる菌が増え、全体の微生物が増加し、作物を育てやすい土へ改善する効果があります。

使い方は

① 発芽前土壌散布

② 発芽後土壌散布

③移植機のかん水装置での散布

など様々な方法があります。

納豆菌の力のパッケージ画像
納豆菌の力5Lボトル
(500mlもあります)

例えば、①の発芽前土壌散布は除草剤に混ぜて撒くことができます。圃場に直接播種する作物は、播種後に撒く除草剤に納豆菌の力を混ぜる方法が簡単でオススメです。

もちろん、発芽後の生育途中に撒く除草剤に混ぜて使うこともできます。

②の発芽後土壌散布は例えば、水稲苗の潅水代わりに「納豆菌の力」の希釈液を撒くことができます。

③は潅水装置の水に「納豆菌の力」を混ぜるだけで移植と同時に施用できます。

播種後に撒く除草剤に納豆菌の力を混ぜて圃場に散布している画像
① 発芽前土壌散布の例
水稲の苗が発芽した後に、潅水代わりに希釈した納豆菌の力を苗に散布している画像
② 発芽後土壌散布の例
移植機の潅水装置内の水に納豆菌の力を混ぜて希釈液を作っている画像。移植と同時に施用できる
③ 移植機のかん水装置での散布例

大根は圃場に直接播種するので、①の発芽前土壌散布で試験しました。播種後、除草剤のトレファノサイド乳剤に混ぜて使いました。

「納豆菌の力」を畑作に用いる場合の標準散布量は500ml/10a(原液)です。なので、10a分の薬剤に500mlの「納豆菌の力」の原液を混ぜて使います。

今回使ったトレファノサイド乳剤の場合は、希釈液の散布量が100L/10aなので「納豆菌の力」を200倍に希釈して施用したことになります。

播種&納豆菌散布

整形機を用いてうね立て同時播種を行い、その翌日、除草剤と一緒に納豆菌の力を畝全面に散布しました。

今回は昨年と同じ過ちを繰り返さないために、ネキリムシ誘殺剤のネキリエースKを畝の上面にしっかりと撒いて駆除しておきました。

<栽培概要>

  • 播種日:2021年4月7日
  • 納豆菌(+除草剤)散布日:2021年4月8日
  • 品種:夢誉

うね体系と施肥量、使用機械は以下の通りです。

納豆菌の力の効果を検証する大根試験圃場の畝体系を示したイメージ図
うね体系
NP2O5K2O
11.2kg15kg9.6kg
施肥量
トラクタRTS23GQCY
作業機平高畝整形機(藤木農機)
播種機APS(アグリテクノサーチ)
鎮圧ローラー(藤木農機)
使用機械
ISEKIのトラクタRTS23で作業をしている画像
うねたて作業後の畝の画像

発芽(4/15)

発芽するまで時間がかかったので心配していましたが、欠株はとても少なくきれいに出そろいました。

ネキリムシの被害も出ていません。これなら、良い試験が出来そうです。

試験圃場に播種した種が発芽した様子。欠株も殆どなくきれいに出そろった
発芽した大根の拡大画像。ネキリムシの被害は少ない様子

生育途中の様子(5/20)

播種後43日目の様子です。順調に生育していますが、地上部の生育に大きな差は感じられません。

今は、次から次へとやって来るカブラハバチに悩まされています。油断せずしっかりと防除していきたいと思います。

納豆菌の力を施用していない試験区の地上部の画像
無処理区
納豆菌の力を施用した試験区の地上部の画像
「納豆菌の力」施用区

大慌ての収穫(6/11) 軟腐病に敗北!?

全体的に大根の首が十分に太くなりました。少し太くなりすぎているように見える株もあります。

今日はジャガイモの収穫もあり、大根の収穫を始めたときには夕闇が迫っていましたが、週末なので収穫しないと日が空いて適期を逃してしまうため、急いで終わらせました。

無処理区のサンプリング株を選んでいると軟腐病が散見されました。株元から腐ってとろけ、強烈な悪臭を放っています。

納豆菌の力を施用していない試験区の株の画像。軟弱病の被害株が散見される
無処理区
納豆菌の力を施用していない試験区で軟腐病が発病した株
無処理区の発病株

事前に発生しているのは分かっていたので、発病株を抜いたり、防除回数を増やしたりして対処していたのですが、残念ながら広がってしまいました。前の週に雨が続いていたのが、原因かもしれません。

次に「納豆菌の力」施用区のサンプルを選んだ時には、軟腐病を見かけませんでした。

納豆菌の力を施用した試験区の株の画像。軟弱病の影響は見られない
「納豆菌の力」施用区
納豆菌の力を施用した試験区の軟腐病が発病せずに順調に生育した大根
「納豆菌の力」施用区は発病無し

ジャガイモを収穫した際も「納豆菌の力」を施用した株はそうか病が少ない感じがしていたので、大根の軟腐病にも効果があるかもしれないと思い、発生率の調査をしてみました。

「納豆菌の力」で軟腐病に負けない土になった?

各区、植わっている状態で連続20株の株元を目視確認し、発病率を調査しました。

なんと、無処理区では15%発病していたのに対し、「納豆菌の力」施用区では発病株はありませんでした。

試験区発病株数発病率
無処理区315%
納豆菌区30%
各区連続した20株を調査

今後、専門家の方も交え、科学的な評価を行っていく必要はありますが、ジャガイモのそうか病抑制で推測した、「納豆菌の力」の効果(「納豆菌の力」を施用することで、土壌微生物の生態系が改善され、その結果、病害が抑制される)が大根でもみられたのかもしれません。

そうか病について詳しくはこちらの実証記事へ 「納豆菌の力」をジャガイモに使ってみた!

昨今、台風の上陸や夏の豪雨が増えているため、高温多湿条件で多発する軟腐病は大根栽培で重要病害であり、今後被害が拡大することも考えられますので、夢総研でも、実証を続けていきたいと思います。

肝心の大根の出来は?

今回、収量については、各区とも生育は順調で十分なサイズになっていたこともあり、差は見られませんでしたが、階級をみてみると、「納豆菌の力」施用区の大根はサイズが揃っていました
Mサイズの割合は、無処理区45%、納豆菌の力施用区75%

納豆菌の力を施用することにより、土壌環境が改善され、土壌状態のムラが緩和されて生育が揃ったのかもしれません。

試験区大根長(cm)大根径(cm)大根重(g)
無処理区38.08.81822
納豆菌区36.79.01754
各区連続した20株を調査
試験区で収穫した大根のサイズ割合をまとめたグラフ
サイズ割合
試験区S
(1~1.5kg)
M
(1.5~2kg)
L
(2~2.5kg)
2L
(2.5kg~)
無処理区4本(20%)9本(45%)7本(35%)0本
納豆菌区2本(10%)15本(75%)3本(15%)0本
各区連続した20株を調査
試験区無処理区納豆菌区
S
(1~1.5kg)
4本
(20%)
2本
(10%)
M
(1.5~2kg)
9本
(45%)
15本
(75%)
L
(2~2.5kg)
7本
(35%)
3本
(15%)
2L
(2.5kg~)
0本0本
納豆菌の力を施用した試験区と施用していない試験区それぞれから収穫した大根を並べた画像

今回の実証ではこのような結果が出ましたが、まだまだ発見できていない効果があるかもしれないので、今後も実証を続けていきたいと思います。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。