「納豆菌の力」をジャガイモに使ってみた!

手間をかけずに土壌環境改善できる微生物資材の「納豆菌の力」をジャガイモに使ってみました。

「納豆菌の力」をジャガイモに使ってみた!

「納豆菌の力」は、枯草菌(納豆菌は枯草菌の一種)を数種類ブレンドした微生物資材です。納豆菌の力を施用することで、ワラなどの大きな有機物を最初に分解してくれる菌が増え、全体の微生物が増加し、作物を育てやすい土へ改善する効果があります。

夢総研では、「納豆菌の力」を様々な作物に使用し、効果の実証を行っています。

ジャガイモへの納豆菌の力の効果は昨年から実証試験を行っており、地上部の生育促進やイモ個数の増加などの効果がみられたので、今年も再現性が確認できるか再度チャレンジしてみました。

試験方法

「納豆菌の力」は土壌散布、苗散布、移植機のかん水装置での散布など様々な方法で施用することができますが、今回は「種芋の浸漬処理」と「移植機のかん水装置での散布」の2つの処理方法で試験してみました。

種芋の浸漬処理

納豆菌の力200倍希釈液に30分漬け込みました。

種芋を希釈した納豆菌の力に浸漬処理しているところ

移植機のかん水装置での散布

ジャガイモ用の半自動移植機(PVH100-60JX)は本来、かん水装置は付いていませんが、テスト用に少し改造してかん水装置とかん水タンクを取付けました。

かん水タンクに納豆菌の力の希釈液を入れることにより、移植同時灌注処理が可能になります。

納豆菌の力を畑作に用いる場合の標準散布量は500cc/10a(原液)で、移植機のかん水量は約30ml/株なので、納豆期の力の希釈倍率を250倍にしました。

移植機のかん水装置の説明イメージ図。かん水装置を使用すれば移植同時灌注処理が可能

移植(3/18)

準備も整ったので、移植を行いました。

<耕種概要>

移植日:2021年3月18日

品種:男爵

畦体系:畦高さ:30cm、畦裾幅:45cm、条間:85cm、株間:30cm

移植機を使用して移植作業を行っているところ

生育途中の様子(5/10)

移植後53日目の様子です。

順調に生育していますが、地上部の生育については試験区間で大きな差はない感じです。

試験区の地上部の比較用画像。無処理区の生育状況
無処理区
試験区の地上部の比較用画像。浸漬処理区の生育状況
浸漬処理区
試験区の地上部の比較用画像。移植同時処理区の生育状況
移植同時処理区

いよいよ収穫(6/11) そうか病が...

地上部も枯れてきて、いよいよ収穫時期になりました。

まず、無処理区から収穫しましたが、なんかイモの表面にかさぶたのようなアザが....これはそうか病の被害が出ているようです。

実を言うと今回、昨秋ジャガイモを栽培した圃場に間違えて肥料散布してしまったため、連作になったことで、そうか病が発生したのかもしれません。(そうか病対策の薬剤は散布しませんでした)

そうか病の被害を受けたジャガイモ。連作したことによる影響が疑われる

残念な気持ちで収穫作業を続け、納豆菌の力処理区の収穫も行っていたところ、一緒に作業していた人から、「納豆菌区はなんかそうか病が少ない気がする」という言葉が。

確かに納豆菌の力処理区は綺麗なイモが多く、そうか病の発生が少ない感じがする!ということで、急遽、そうか病の発生率の調査をしてみました。

調査結果発表! 納豆菌の力処理区はそうか病の発生が少ない?

各区、収穫したイモ10kg分、2セットサンプリングし、病斑のあるイモを数え発病率を調査しました。

やはり無処理区の発生が多く、発病率が20.2%でした。

それに対し、納豆菌の力処理区は、浸漬処理区が「1.3%」、移植機灌水処理区が「2.8%」と納豆菌の力を処理した試験区は大幅にそうか病の発生率が低い結果が得られました。

試験区調査個数発病個数発病率平均発病率
無処理区1202823.3%20.2%
1402417.1%
浸漬区14942.7%1.3%
13500.0%
移植同時散布区14110.7%2.8%
10454.8%
各10kg × 2反復調査
試験区のそうか病の発病率を比較したグラフ。納豆菌の力を使用した浸漬処理区と移植機潅水処理区の発病率が大幅に低い
納豆菌の力処理によるそうか病の発病率

我々は病害の専門家ではなく、また、つくばみらい市にある夢総研の圃場だけの結果ですので、納豆菌の力を処理した場合における、そうか病に対する効果の科学的な評価はできませんが、納豆菌の力を施用することにより、ジャガイモの周囲の土壌微生物の生態系が改善され、その結果、そうか病の発生が抑制されたのかもしれません。

いずれにしろ、ジャガイモ栽培で大きな問題となっている、そうか病の発生抑制に効果がある可能性が示唆されましたので、今後、専門家の方に科学的な評価をお願いできないかなど検討したいと考えています。

これから秋植えのジャガイモのシーズンが始まりますので、興味がある方は是非問い合わせください。

収量調査結果

納豆菌の力施用区はやや増収になりました。
(無処理区に対し、浸漬処理区107.4%、移植機灌水処理区111.7%)

階級をみてみると、L以上の大きいイモの割合が少し増えている感じです。

こちらも、納豆菌の力を施用することにより、土壌環境が改善され生育が促進したのかもしれません。

収量(kg/10a)対無処理区
無処理区3831
浸漬区4113107%
移植同時散布区4278112%
※調査結果(n=10)を基に10aあたりに換算
試験区個数
(10株)
2S~M
(30~130g)
L~3L
(130~350g)
無処理区14190.1%9.9%
浸漬区14689.0%11.0%
移植同時散布区14785.7%14.3%
※各区10株調査
各試験区から収穫したジャガイモを並べて比較した画像

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。

執筆者

井関農機(株)

井関農機(株)

農業機械の開発、製造、販売を行う農業機械総合専業メーカー。1926年創立以来、農業の機械化・近代化に貢献。魅力ある「農業=儲かる農業」の実現に向け「ハード(農業機械)」と「ソフト(営農技術)」の両面からお客さまの営農スタイルに合ったベストソリューションの提供に取り組んでいる。