スリップローラーシーダーでの節水型乾田直播 秋田県潟上市
乾田直播で特に注目を集めている、スリップローラーシーダーと節水型乾田直播。
両方を組合わせて、水が溜まらない砂地圃場で取組を行う生産者を訪問しました。
- 乾田直播
- BS資材
- トラクタ作業機
ISEKIグループ
乾田直播は春に行うのが常識ですが、春は農作業が集中してとても多忙です。
そこで、これまでの常識を覆す究極の作期分散技術として、今後の普及が期待される「初冬直播」をISEKIが実際にやってみました。
稲作の省力化技術として「乾田直播」が近年広がりを見せています。生産者の大規模化が急速に進み、人手不足への対策が求められている事が、乾田直播が広がりを見せている背景として挙げられます。
しかし、限られた労働力の中で今後さらなる大規模化を見据えた際に、これまで通りの春作業では、作業工数が不足することが想定されます。
また、水稲栽培と並行して野菜や果樹、花の栽培が盛んな地域では、水稲作業が集中する春先がそれら作物の収穫最盛期と重なることが多く、春の作業負担が極めて大きいです。
そこで、現在一部の生産者が取組を始めているのが、究極の作業分散効果が期待できる「初冬直播」です。今回、ISEKIでも実際に「初冬直播」をやってみました。

・「初冬直播」は、雪が降る前の初冬の田んぼに稲の種子を直播し、下の写真のような積雪した圃場でそのまま土中で越冬させて翌春に発芽・苗立ちさせる新しい栽培技術です。
・積雪の無い地域では、初冬~早春(11月~2月)に、いつでも播種することが可能です。
・スリップローラーシーダーなどの既存の播種機やオペレーターなどをそのまま活用でき、すでに乾田直播の取組を行っている生産者であれば、新たな投資が必要ありません。また、うるち米であれば、品種を問わずに導入が可能な技術です。
・ただし、春の直播より出芽率が低く、苗立ち数を確保するために種子を多く播く必要があります。

画像は2026年2月に撮影した秋田県内の水田
このように積雪していても、初冬直播は雪の下で種子を越冬させます
初冬直播は、岩手大学農学部が中心となって各地の研究機関が共同で技術開発・実証している栽培技術で、すでに東北地方や新潟県内を中心に生産者が取組を行っている技術です。
ISEKIのお客様でも、すでに初冬直播の取組を行っている生産者が複数いらっしゃいます。
実例を挙げますと、宮城県仙台近郊の大規模生産者は東北地方でも雪が少ない仙台平野の気候条件を活かして、前年12月から3月まで毎月乾田直播の播種作業を行っています。
また、東北以外の事例として、三重県松阪市の大規模生産者は2月上旬から乾田直播の播種を開始し、2月20日頃までに全圃場の播種を完了させています。
このように、初冬直播は東北地方のみならず、大規模生産者の間で広がりをみせはじめています。
ISEKIでも、2026年に実際に初冬直播をやってみました。
圃場は茨城県つくばみらい市、播種日は2026年2月6日です。初冬ではなく立春時期の播種ですが、まだまだ真冬に近い寒さで、通常の乾田直播に比べると大幅に早い播種時期です。つくばみらい市周辺での乾田直播の播種時期は3月中旬~4月上旬が一般的なので、まだ稲作に関する作業が始まっていない時期に播種を行いました。
以降、ISEKIが実際にやってみた内容をご紹介します。
◇品種
・コシヒカリ(2作前にあたる2024年秋に収穫した種籾)
種籾は冷蔵庫で15℃以下になるよう常時低温保存をしていました。種子の低温保存を行っていないと、播種後に種子の休眠が浅くなり、このようにより確実に発芽をうながす観点から、本来であれば当年産種子(この場合だと2025年秋に収穫した種子)を使うのが望ましいです。
◇播種量
・播種量を3段階に分けて比較を行います。10aあたり8㎏、10kg、12㎏の3つの区画を作りました。
初冬直播は一般的な乾田直播よりも発芽率が低くなるため、播種量を多めにします。(つくばみらい市周辺での一般的な乾田直播の播種量は10aあたり4~5㎏程度です。)
◇種子処理
・種子は乾籾を使用しました。浸種は一切行っておりません。
・種子処理剤としてキヒゲンR2フロアブルを使用しました。
とても大事なポイント!! 初冬直播ではキヒゲンR2フロアブルを必ず使ってください。
キヒゲンR2フロアブルを使わないと発芽率が大幅に低下します。(10%以下になる場合もあります)
キヒゲンR2フロアブルは発芽を阻害する土中の菌に対抗し、鳥害の抑制効果があります。
上の動画はキヒゲンR2フロアブルのコーティング作業です。種籾10㎏に対して200ml使用します。
薬液の粘りが強いので、コーティングマシンでの作業が便利です。
ISEKI圃場での播種はニプロのスリップローラーシーダーを使いました。
今回は冬晴れが続く関東での播種ですが、東北の日本海側や北陸では晩秋に雪が降る前の播種作業となります。
圃場が乾燥していない状態で播種する場面が多くなりますが、土が多少湿っている状態でも播種作業出来るのがスリップローラーシーダーの強みです。
上の動画はスリップローラーシーダーでの播種作業(2026年2月6日)
施肥・耕うん・播種・鎮圧を同時に行っていきます。作業はいたって順調です。

2月はまだまだ冬の天気です。播種した2日後の2月8日、強烈な寒波が襲来し関東地方でも雪が積もりました。
最寄りの観測点であるつくば市の最低気温は-4.8℃と底冷えし、最高気温は-0.3℃と真冬日になりました。積雪は13cmを記録しています。
もちろん、播種した圃場も雪で真っ白です。

はたして、播いた種は大丈夫でしょうか? その②に続きます。
◇初冬直播き研究会ホームページ(事務局:岩手大学農学部作物学研究室)