スリップローラーシーダーでの節水型乾田直播 秋田県潟上市

乾田直播で特に注目を集めている、スリップローラーシーダーと節水型乾田直播。
両方を組合わせて、水が溜まらない砂地圃場で取組を行う生産者を訪問しました。

水が溜まらないネギ跡砂地圃場で「節水型乾田直播」

 秋田県潟上市。日本海に面した男鹿半島の入口で、今年から乾田直播の取組を行う生産者がいらっしゃいます。
 今回お伺いしたのは、新進気鋭の若手生産者であるO様。元々、農業機械を販売する仕事をしていましたが、コロナ禍を機に自分自身で農作物を作りたいとの強い思いから帰郷・就農しました。
 O様は前職の経験を活かして、機械化の効果が高い品目を作付しています。就農後は野菜を軸にした複合経営を行っており、ハウスではアスパラガスを、露地では海に近く排水性が良い砂地圃場を活かして長ネギを大規模に栽培しています。
 その中で、長ネギを作っている砂地圃場を輪作して「節水型乾田直播が出来るのではないか」というアイデアが生まれ、2026年の春から節水型乾田直播をやってみる事にしました。

今回取り組む「節水型乾田直播」とは

 今回O様が取り組むのは、「節水型乾田直播」です。
 一般的な乾田直播は稲の出芽後に水を溜めて栽培しますが、今回水稲輪作を行おうとしている長ネギを栽培していた圃場は砂地のため水を溜める事が難しいです。そこで、水が溜まりにくい圃場でも水稲を栽培するために、「節水型乾田直播」にトライすることにしました。
 節水型乾田直播は近年注目を集めている栽培方法で、乾田直播の更なる省力化を図りたい生産者向けの技術です。ポイントは次の通りです。

◆概要
・マイコス(菌根菌資材)等のバイオスティミュラント資材(農薬や肥料以外の資材)を使い、稲の水分や養分の吸収を補助することで節水型管理のできる乾田直播です。
・基本的に湛水をせずに栽培しますが、走水は必要です。

※マイコス(菌根菌)とは・・・植物の根にくっついて、栄養のやり取りをする「助っ人の菌」です。
菌糸を根の周りに広げて、養分や水分の吸収を補助します。

◆メリット
・湛水のための圃場準備や水管理の手間が減り、省力化に直結します。
・水の確保に制約があったり、水が溜まりにくい圃場でも稲作を取り組む事が出来ます。

◆注意点
・現状では栽培技術が完全には体系化されておらず、ノウハウが無いと難しい栽培技術です。
 成功している事例も見られますが、失敗事例も複数存在し、栽培技術がまだ標準化されていません。
・水を張らないので畑雑草が多く発生します。また、湛水して使用する除草剤も使用できないため、
 イネの生育後半にも多く雑草が発生しやすいです。通常の乾田直播以上に除草対策が必要です。
・走り水を行わずに雨水だけで栽培すると、干ばつ害が発生しやすいです。


スリップローラーシーダーって何?

 今回の節水型乾田直播で使う播種機は、松山株式会社の「スリップローラーシーダー」です。
スリップローラーシーダーは、施肥・耕うん・播種・鎮圧を同時に行うことができる播種機で、
鎮圧性能が高く、ドリルシーダーでの播種が難しい湿田でも施肥・播種作業が可能なことから、

乾田直播の取組を行っている生産者から、大変注目されている機械です。
 今回はヰセキトラクタのTJV755にスリップローラーシーダーを装着して播種をしました。
砂地圃場でどこまで精度よく播種と鎮圧が出来るのか注目です。

菌根菌資材を使った種籾

 播種するのは、主食用米の「あきたこまちR」です。水の確保が難しい圃場であることと、北日本の寒冷地であることから、苗立ち本数を確保するために播種量は10㎏/10aとやや多めにします。
 種籾には、鳥害抑制効果と種子消毒効果がある「キヒゲンR2フロアブル」を塗布しました。
さらに、菌根菌資材として「フキミン」を種子にまぶして播種します。養分や水分の吸収向上を期待します。
(下画像の細かい粉が菌根菌資材のフキミン この後ホッパー内で種子と混ぜて全体に粉衣させる)

スリップローラーシーダーの実力を発揮

 いよいよ播種です。播種当日の朝まで大雨が降っていましたが、砂地のため水は全く溜まっておらず、すでに土の表面は乾き出していました。湛水しての稲作が出来ない圃場だと強く実感します。
 このような砂地圃場でも、下の動画の通りスリップローラーシーダーの播種作業は順調です。

 4㎞/h程度の車速で作業しましたが、スリップローラーでの鎮圧効果は抜群です。播種と同時に鎮圧した後の圃場表面は鏡のように仕上がっていました。播種後の鎮圧は土と種子を密着させて、苗立ち率を上げることを目的とします。砂地圃場でもバッチリと鎮圧が出来ている様子がうかがえます。

 播種の深さは20㎜で設定しました。本来、秋田県を含む東北北部は播種深さ15㎜が推奨されていますが(農研機構より)、乾燥害や風による表土飛散を防ぐため、少し深めの20㎜に設定しました。
 播種の深さを一定に保つことも乾田直播を行ううえで大事ですが、つまみを回すだけで1条ずつ簡単に播種の深さを調整できるのもスリップローラーシーダーの良い所です。

 この後、どのような苗立ちとなるのか、期待して待とうと思います。

スリップローラーシーダーの商品紹介リンク

①松山株式会社 スリップローラーシーダー SRシリーズ  WEBページ

②松山株式会社 スリップローラーシーダー カタログ

執筆者

ISEKIグループ

ISEKIグループ

2025年、井関農機が創立100周年を迎える記念の年に、国内広域販売会社6社と三重ヰセキ販売、井関農機 営業本部が統合し、新たに「ISEKI Japan」としてスタートしました。

これからも、私たちの「地域で農業を営む皆さまを一番近くで支えていきたい」という熱い思いを胸に、農業に関わるあらゆる場面で、日々皆様のお役に立てるよう努めて参ります。

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2025年、井関農機が創立100周年を迎える記念の年に、国内広域販売会社6社と三重ヰセキ販売、井関農機 営業本部が統合し、新たに「ISEKI Japan」としてスタートしました。 これからも、私たちの「地域で農業を営む皆さまを一番近くで支えていきたい」という熱い思いを胸に、農業に関わるあらゆる場面で、日々皆様のお役に立てるよう努めて参ります。