実証
2024.11.20
BS資材を使って小麦栽培
話題の微生物資材を使って小麦栽培を行いました。栽培の経過をレポートします!
- 概要テーマ登録日2024.10.18BS資材を使って小麦栽培
- レポート1最終更新日2024.10.18BS資材について
- レポート2最終更新日2024.10.18試験区割
- レポート3最終更新日2024.10.18納豆菌の力
- レポート4最終更新日2024.10.18マイコスWP水和剤
- レポート5最終更新日2024.10.18YFFプレミアム1号
- レポート6最終更新日2024.10.184種混合液
- レポート7最終更新日2024.10.30栽培開始! YFFプレミアム1号を散布
- レポート8最終更新日2024.10.30マイコスWP水和剤を粉衣し播種
- レポート9最終更新日2024.10.30途中生育
- レポート10最終更新日2024.10.30追肥(4種混合液を散布)
- レポート11最終更新日2024.10.30出穂期
- レポート12最終更新日2024.11.12穂ぞろい期~成熟期
- レポート13最終更新日2024.11.12BS資材添加で収量増傾向あり!
- レポート14最終更新日2024.11.12まとめ
テーマ登録日2024.10.18
BS資材を使って小麦栽培
最近、環境に配慮した栽培、いわゆる環境保全型農業の普及に向けた取組みがひろがっています。具体的な取組をあげると、化成肥料の使用量削減に向け、自然由来の資材での栽培があります。また、温暖化により年々栽培が難しくなっています。その対応策として微生物の力を利用し、土壌状態の健全化を図ることで作物自体が厳しい環境に順応する働きを助けるといった試みもなされています。
そのような考えから、今注目されているのがBS資材で、それらは自然由来の微生物や成分を含み施用することで作物体や土壌の状態を健全に保つ効果があるとされ、作物体の生育を助ける働きをします。今回主に取り上げるのは㈱NEWGREEN SUPPLY社の各種BS資材と、APコーポレーション社の納豆菌の力です。小麦の栽培に添加しどのような生育経過となるか、検証をレポートします。
栽培については↓の記事で紹介しています。
◇若手社員による小麦栽培チャレンジ
最終更新日2024.10.18
BS資材について
バイオスティミュラント(Biostimulant)は直訳すると「生物刺激剤」です(以下BS資材とする)。
BS資材とは「干害、高温障害、塩害、冷害、霜害、酸化的ストレス(活性酸素によるダメージ)、物理的障害(雹や風の害)、農薬による薬害など、非生物的ストレス(Abiotic stress)に対する抵抗性を高め、結果的に増収や品質改善を実現しようとするものである。」(日本バイオスティミュラント協議会,2023,https://www.japanbsa.com/biostimulant/definition_and_significance.html)とされています。
最終更新日2024.10.18
試験区割
試験区割は下の表のようです。
無処理区と比較してマイコス菌や納豆菌の力添加により、生育に差が生まれるのか検証します。また、YM+α区と比較し、追肥資材を加えることでさらなる効果増となるのか検証します。次の章で表内の各種資材について紹介していきます。
小麦はさとのそらを8㎏/10aで播種します。
施肥については下表のように行いました。詳しい施肥内容は↓の記事をご覧ください。
◇若手社員による小麦栽培チャレンジ
最終更新日2024.10.18
納豆菌の力
「納豆菌の力」(APコーポレーション社)とは、土壌微生物のバランスを短期間で整え、作物を育てやすい土へと改善する、微生物土壌活性材です。
近年多発している異常気象などの環境変化に対応でき、品質の良い作物を育てるために、土壌微生物の改善が再認識されています。生物性の改善には、有機物の投入を長期にわたり行う方法が一般的で効果が出るのに時間がかかりますが、「納豆菌の力」を使えば、短期間で土壌微生物のバランスを整えてくれます。
納豆菌は枯草菌と呼ばれる細菌の一種です。土壌中に生息する菌の中でも最初に有機物の分解に働く菌で、食物連鎖ピラミッドの一番下の位置にあたります。
「納豆菌の力」とは、そんな枯草菌を数種類ブレンドしたものです。納豆菌の力の施用によってワラなどの大きな有機物を分解してくれる菌が増え、全体の微生物が増加することで良質な土作りに貢献します。そうして有機物の分解が促進されると、作物に必要な栄養分が補給されます。
また、「納豆菌の力」に含まれている枯草菌は発根促進物質を供給するため、根はりが良くなる環境を作り出します。さらに、土壌微生物の種類や数の増加によって拮抗作用が働き、病原菌が働きにくい環境に変化させてくれるのです。
納豆菌の力での過去の実証は↓記事をチェック!
最終更新日2024.10.18
マイコスWP水和剤
「マイコスWP水和剤」(NEWGREEN SUPPLY社)は、菌根菌の一種であるマイコス菌を含有する微生物資材です。マイコス菌は作物や土壌に働きかけ、リン酸等の養分吸収や水分の輸送機能を向上させ、作物の健全な成長を助けます。
マイコスWP水和剤は粉状で、種子1㎏あたりに5g粉衣して使用します。また、水稲などの育苗には水に溶かし、散布して使用することもできます。
最終更新日2024.10.18
YFFプレミアム1号
「YFFプレミアム1号」(NEWGREEN SUPPLY社)はマッシュルーム廃菌床を基に二価鉄や菌根菌等を含有する土壌改良資材です。堆肥のような形状をしており、土壌の団粒化を促進します。
また、施用することにより土壌の酸化還元電位下げる働きをします。それにより病害が発生しにくい土壌環境を形成します。
最終更新日2024.10.18
4種混合液
4種混合液は「ぐんぐん伸びる根」「アイアンガードアクア」「K3-NEO」「ラメオ1号」の4種を水で希釈し混合したものです。これを出穂前の追肥時期に葉面散布します。
●ぐんぐん伸びる根・・・ビール酵母細胞壁を含有し細根発達を促す。
●アイアンガードアクア・・・二価鉄を含有し効率的な光合成をサポート
●K3-NEO・・・天然石英閃緑ヒン岩スラリー鉱物を含有し植物への浸透性を高める
●ラメオ1号・・・海藻液肥を含有し肥料成分により作物の生育を助けます。
最終更新日2024.10.30
栽培開始! YFFプレミアム1号を散布
YFFプレミアム1号を散布します。散布タイミングとしては播種前の施肥・土づくりの際に行います。推奨散布量は60㎏/10aです。
●散布の感想
堆肥のような形状をしているため、社内で保有していた一般的な施肥ソワーやブロードキャスターでは、シャッタ部でブリッジが発生し均一散布が難しかったです。散布のやり方については今後も検討していきたいと思います。
最終更新日2024.10.30
マイコスWP水和剤を粉衣し播種
小麦種子1㎏に対しマイコスWP水和剤5gを粉衣します。粉衣の方法はメーカーによると、播種機のホッパーに種子を入れそこにマイコスWP水和剤を入れ軽く混ぜるということでした。今回は念のため事前に袋の中で種子とマイコスWP水和剤をシェイクして混ぜました。これを播種することで、種子にまとわりついたマイコス菌が土壌に広がっていき、効果を発揮します。納豆菌の力についても同様に処理を行い播種しました。
粉衣の様子。ホッパー内に種子を入れ、そこにマイコスWP水和剤を投入します。
粉衣後、播種機で播種していきます。播種は12月上旬に行いました。概ね通常通り播種できました。途中粉衣したマイコスWP水和剤が播種機内部の一部部品に堆積して、種子が落下しにくくなることがありました。マイコスWP水和剤に限ったことではありませんが、種子に粉衣して播種する際は、定期的に播種機内で詰まりが発生していないか確認することが重要です。
最終更新日2024.10.30
途中生育
年が明け、1月下旬の様子です。問題なく生育しています。
最終更新日2024.10.30
追肥(4種混合液を散布)
3月下旬茎立期頃に追肥作業を行いました。YM+α区には4種混合液を30L/10aの割合で葉面散布を行いました。スプレーヤで圃場全体に一括で散布してしまいたい所ですが、圃場内で区画を分けているので背負動噴で散布しました。
最終更新日2024.10.30
出穂期
4月中旬に出穂期を迎えました。ここまで試験区の処理作業としては①YFFプレミアム1号の散布②種子に粉衣③4種混合液の散布です。特段大量に何かを投入するということもなく、簡単に施用できたと感じています。
最終更新日2024.11.12
穂ぞろい期~成熟期
5月上旬頃です。穂が出そろい色づき始めました。
6月上旬です。そろそろ収穫になります。
最終更新日2024.11.12
BS資材添加で収量増傾向あり!
6月中旬、坪刈りサンプリングし、収量を算出しました。
・BS資材を添加したYM区、YM+α区、納豆菌区は無処理区に比べ、穂数増加に伴い面積当たりの粒数が増え、収量増となりました。
・さとのそらの播種適期は11月中下旬ですが、今回の検証では天候やその他諸事情により12月上旬播種となりました。小麦は遅まきになると穂数が減る傾向がありますが、BS資材を施用した区では、遅まきでも穂数を確保することができました。大豆と小麦の輪作体系では大豆収穫と小麦播種時期が近く、タイト日程になりますが、BS資材施用により作期分散につなげられる可能性がありそうです。
・YM区と追肥資材を入れたYM+α区を比較してYM+α区は、穂数、1穂粒数、千粒重が増加しており、収量増となっていました。
・坪刈り調査のため、収量が実際より多く出ていると考えられますが、仮に実刈6%ロスで考えると、無処理区は精粒重495㎏/10aのため、概ね近隣圃場と同等の生育だったと考えられます。
最終更新日2024.11.12
まとめ
●コスト感
簡単にコスト計算をしてみました。無処理区とYM+α区を10aあたりで比較して、YM+α区は支出(資材代)約+6,400円となりましたが、利益は約+22,100円増となりました。また、無処理区と納豆菌区では、納豆菌区は支出(資材代)約+1,400円となりましたが、利益は約+22,200円増となりました。今回の検証では資材添加が収益向上に寄与したという結果になりました。今回栽培を通して目立った病害虫被害は発生しておらず、収穫した小麦も近隣圃場とほとんど遜色無い出来でしたが、社内検証メインのため小ロットということもあり収穫物の品質検査は実施しませんでした。そのためコスト試算は、念のため2等Cランクと品質を低めに設定し厳しめで算出しました。
※コスト試算はR6年時の独自試算によるものです。実際の価格とは異なる場合があります。
※資材価格は時期によって変動する場合がございます。また地域によっては、資材取扱が無い場合がございます。お近くのヰセキ営業所へお問い合わせください。
●BS資材を使ってみた感想
圃場1枚あたりに何かを大量投入するというわけではなかったので、施用としては手軽にできたと感じています。また、栽培方法は普通通り、特別なことはしていないので、栽培に組み込みやすいと感じました。また目に見えて収量増の傾向が見えたのも、使ってみて良かったと感じました。